価値あるドライブレコーダー
厚生省としては、これまでの情報を全部会議に提出して、それでメンバーの先生の判断を抑いで、とりまとめる以外に方法はないということになった。
食事後に再開された会議では、保健医療局長が、まずその趣旨を説明した。
いろいろの意見が開陳された。
この際、多少不正確でも、警告の意味も含めて多くの情報を提供したほうがいいという意見と、はっきりしていることだけにすべきだという意見が対立した。
甲論乙駁、いつ議論が果てるかがわからない状態だった。
時間は、午後10時を回っていた。
どうしたものかと思案投げ首のところへ、再び厚生省から連絡が入った。
先ほどの感染した医師が年後9時半に死亡したということと、その医師は家でペットとして犬を飼っていたことがわかった。
それと、香港からのロイター‐共同電の続きとして、それまで香港で発生した患者の85%が、なんらかの形でペットを家で飼っていたという。
同一の会社で働いていて、ともに感染した場合でも、全部の患者がペットを飼っていたようだという。
ペットを飼っていないのに感染した人でも、発病の2、3日前にペットを飼っている人を訪問しているという。
香港では、つい1時間ほど前に「ペットを飼っている人は用心するように」との警告を出した。
人々は争って、今ペットを捨てに行っているという。
これは、無視できない情報だということになった。
再び、TV電話がセットされて、九州のK博士とのラインをつないだ。
K博士に今の香港の情報を伝えると、K博士は、「多分そういうことになるのだろうと思っていました。
すべてのペットが原因ではないと思います。
恐らく犬や猫だけでしょう。
烏は大丈夫なのではないでしょうか。
そして、恐らく元凶はブタだと思いますよ。
ブタの体内に、香港インフルエンザウイルスが潜伏していて、それが変性して、猛毒のウイルスになって、そのブタに接触した(空気伝染)犬や猫が感染して、人間にうつしたのではないかと思いますよ」という見解だった。
この会議では、とにかく、少なくとも“ペットにご用心”という警告はしようということになった。
それから1時間半後に、香港では犬や猫の死骸があちこちに放置されているので、衛生局では明日の早朝から職員を総動員して、死骸のあと片付けをすると発表した。
ところが、その報道のすぐあとに、犬の死骸を解剖した学者の話として、ほとんどの犬には、ウィルスらしきものはなかったと発表している。
なかには、患者の発生した家で飼っていたペットの犬にも、問題のウイルスらしきものはなかったという。
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